佐藤研究室

宇宙機ダイナミクス制御領域 大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 知能制御学系


第26回衛星設計コンテスト 特別レポート

メンバー:岩渕真和、岩郷浩武、北村颯太、田坂直也、西下敦青、分領勇貴、齋藤涼、楯大樹

衛星設計コンテストとは
我々大阪大学大学院山田研究室では、毎年M1とB4の有志がチームを組み衛星設計コンテストに参加しており、山田・佐藤研究室は5年連続の出場となります。 5年目となる今年は山田研究室では初めての試みである惑星探査領域に挑戦しました。 従来、地球周回軌道上でミッションを行う衛星を設計してきましたが、今年は地球周回軌道から飛び出し月の裏側まで行く衛星を設計しました。前例がない分、新しく考える部分も多く苦労することもありましたが、チームで役割を分担し各自が妥協することなく設計を行いました。 その結果、2年連続で最優秀賞「設計大賞」を受賞することができました。

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地球月系L2点ハロー軌道周回衛星「颯」
我々大阪大学のチームは50㎝立方の超小型衛星「颯」を設計しました。 本衛星は、ロケットにより宇宙空間に放たれた後、低推力エンジンである電気推進により地球周回低軌道から月の裏側に存在するハロー軌道という軌道まで遷移します。 ハロー軌道まで遷移する軌道を設計し実証を行うことが本衛星のメインミッションとなります。 我々の衛星が目指すハロー軌道とは、宇宙空間における地球や月などから受ける重力場と回転運動による遠心力が釣り合うラグランジュ点周りの周期軌道です。 ラグランジュ点は合計5つあり、本衛星は特に月の裏側に存在するL2点周りのハロー軌道を目指します。 ハロー軌道は不安定な周期軌道ではありますが軌道保持制御により衛星をハロー軌道上に滞在させることができます。 特にL2点周りのハロー軌道は、衛星を長期間滞在させることで、将来的にスペースコロニーや宇宙望遠鏡、中継衛星の設置が期待できます。

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第26回衛星設計コンテスト(5)

「颯」の重要性・技術的意義
開発コストの比較的小さな超小型衛星を利用し軌道設計・実証を行うことで、将来的なハロー軌道を利用した中型から大型の人工衛星開発における軌道設計やバス部設計に役立つと考えます。 また、電気推進による地球周回低軌道からハロー軌道までの軌道全体を設計することにより、ピギーバックを想定とする本衛星は打ち上げ機会を多く得られ、ミッションの汎用性の拡大が期待できます。 本衛星はサブミッションとして地球近傍の放射線帯であるヴァンアレン帯およびハロー軌道近傍の宇宙放射線の強度を測定します。 これにより将来の有人宇宙飛行や宇宙への移住を考える際の被爆量推定や放射線防護対策に貢献できると考えます。 さらに、衛星の軌道保持を行いハロー軌道上に衛星を長期間滞在させ地上局と通信を行います。これにより中継衛星との役割を果たすことができるか実証します。

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