CMGの技術応用として、成層圏を飛翔する気球ゴンドラの姿勢安定化に取り組んでいます。
成層圏気球望遠鏡FUJIN(風神)-2は、立教大学、大阪大学、北海道大学、大分高専が開発する惑星観測用気球望遠鏡で、全備重量1。5t程度のゴンドラを高度35kmの成層圏に浮かべ、木星などの惑星を1週間以上観測するプロジェクトです。
本研究室ではシステム開発と姿勢制御系を担当しています。
気球望遠鏡は、空気が薄く星像の揺らぎが少ない成層圏環境を十分に活用するため、目標天体に対する指向精度誤差を0。1秒角(1/36000度)以内にすることが求められています。
一方、望遠鏡が取り付けられるゴンドラは、気球から数十mの長さの吊り紐を介してつり下げられているだけなので揺れやすく、ゴンドラの姿勢制御技術は必須要素です。
この姿勢制御システムにピラミッド配置CMGシステムを適用し、ゴンドラを望遠鏡の土台として機能させます。
※成層圏気球とは、ヘリウム等を充填した気球により高度15~50kmの成層圏へ装置を運搬し、種々の観測や実験を行うための気球です。
気球は小さなもので直径数m、大きなもので、直径100m(満膨張時)になり、ペイロード重量は数kg~1t程度になります。
日本国内ではJAXA宇宙科学研究所によって、北海道で毎年5~6月と8~9月に、数機ずつの飛翔実験が行われています。
世界でもアメリカ、フランス、スウェーデン、ブラジル、インド等が毎年実験を行っています。
気球による成層圏での科学観測、実験自体の歴史は古く、すでに1970年代には大型の望遠鏡を用いた天体観測が行われていました。
近年では気球による実験がより様々なテーマで行われるようになり、ゴンドラの姿勢制御もより多くの場面で求められるようになってきました。
実験の多様化に伴ってゴンドラの姿勢制御に対する要求も、「精度は粗くてもよいので単純なシステムで実現したい」「複雑なシステムを搭載してでも、従来よりも高精度な制御をしたい」というように変化してきています。
適切な制御を行うためには、制御対象についての理解が必要です。
しかし、気球、吊り紐、ゴンドラで構成される気球系のダイナミクスモデルは、初期のねじりバネモデル、単(二重)振子モデルが現在でも姿勢制御系の設計検討に用いられています。
本研究では現代の気球実験での姿勢制御系設計に合わせた、より詳細な気球系ダイナミクスモデルの構築と、気球実験の多様性に即したダイナミクスモデルの一般化を目標に、構造レベルからのダイナミクスモデルの検討と、物理パラメータの取得実験を進めています。